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「当たり前」の裏側を想像する

最近の流行り、リアルピタゴラスイッチ。この後ボールは車道に飛び出していくので、親が回収に駆けずり回ることになる。
最近の流行り、リアルピタゴラスイッチ。この後ボールは車道に飛び出していくので、親が回収に駆けずり回ることになる。

先日、展覧会でご一緒した画家さんが、私が育休中だと知ってこんなことをおっしゃっていた。

 

「僕は洗濯物を干すのが好きでね、冬の冷たい空気の中、かじかんだ指をハァ~ってしながら干すのがいいんだ。ご飯も週の半分は僕が作るな。でもこういう話をすると、僕の世代(60代)の男たちはすぐに『その時嫁さん何やってんだ。』て言うんだよ。全く想像力がない。じゃあ奥さんが御飯作ったり洗濯物を干したりしている時に君は何をやっているんだ?といつも聞き返すんだけどね。」

 

人は「当たり前」だと思っていることに対して驚くほど鈍感で、その裏にあるものを想像することができない。

パートナーや親に何でもやってもらって過ごしてきた男性(女性の場合もあるだろうが、多くは男性だ)の多くは、そのありがたみが分かっていないし、そこに相手がどれだけのコスト(時間と労力)をかけているかを想像することができない。

 

定時に帰ろうとする子育て社員に「いいね早く帰れて。」と言ってしまうオヂサン(オバサンの場合もあるだろうが、多くはオヂサンだ)は、目の前の「定時に帰る」という状況しか見えておらず、その先に大変なことが待っているなどとはこれっぽっちも想像できていない。

 

会社を出てからダッシュ(本当に走る)で保育園に迎えに行き、帰宅したらまとわりついてくる子どもには笑顔を見せながらも鬼の形相で夕飯を作り、自分が夕飯を食べたのか記憶が無いような状態で子どもにメシを食わせ、風呂に入りたくない(もしくは風呂が好きすぎて出たくない)子どもと風呂場でも格闘し、自分は全裸びしょ濡れのまま洗面所から裸で脱走する子どもを追い回し、エンドレスで同じ絵本を何度も読み、寝かしつけているうちに自分も寝落ち。

真夜中に目が覚めて、夕飯の洗い物が終わっていない、洗濯機に洗い終わった洗濯物が残ったままになっている、そのことに気づいた時の絶望感といったら。

 

あの絶望感を想像しろ、と言ったって無理に決まっているが、それでも、帰ったら夕飯作って、ご飯食べさせて、風呂に入れて、寝かしつけて・・・う〜ん、それは大変だ、ぐらいの想像はできてもいいと思うのだが、それすら出来ないオヂサンは多い。

私が過去に出会ってきた、私に向かって「いいね早く帰れて。」とのたまったオヂサン達は例外なく子どもがいて、驚くべきことに殆どが共働きだった。

子どもは水につけておけば豆苗みたいに勝手に育つとでも思っているのだろうか。

 

何故そんなにも想像できないのか。
答えは明白だ。全然やったことがないからだ。

全く未知の領域だから、想像する取っ掛かりすらない。

我々が火星人を想像しても、タコみたいなしょうもない姿しか想像できないのと同じだ。

 

そう考えると、やはり5日間でも、何なら1日だけでもいいから丸一日育児・家事を自分一人で切り回してみるといいと思うのだ。

一度全部自分ごととしてやってみるとよく分かる。仕事より余程大変だと思い知るだろう。

(慣れてこれば、仕事より大変というよりは、仕事とは違う大変さだということにも気づくだろう)

 

そういう意味では、以前に「男性版産休のススメ」という記事を書いたけれど、父ちゃんが家事・育児を切り回す経験をするのは早ければ早いほうがいい。

家事は結婚したらすぐにシェアする。子どもは生まれたらすぐに父ちゃんに任せる。

産休や育休も取れるチャンスがあるなら取る。

そうすることで「想像力欠如オヂサン」になることは避けられる。

 

人の考えていることなんて分からないし、大変さを共感するのも難しい。

でも、想像するってとても大切だ。

 

そして、想像力欠如オヂサンばかりやり玉に上げてきたが、逆の想像もやはり必要だ。

 

自分が早く帰った後、仕事を完パケまで終わらせてくれたのは誰なのか。

私が育休を取得している間、医師や看護師の要望を捌いてくれているのは誰なのか。

夜遅く帰ってきたパートナーは、昼間どれ程大変な想いをして働いてきたのだろうか。

 

「ありがたい」の対義語は「当たり前」だ。

でも、人間はいい加減にできているから、すぐに「ありがたい」ものを「当たり前」だと思ってしまいがちだ。

感謝を忘れずに過ごしていきたい。自戒を込めて(というより自戒そのもの)。

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今日も夕方絵の教室でワークショップがあるので、朝から夕飯の準備。下ごしらえが終わった後、人事関係の書類提出のため職場へ。ついでに恒例の電車見物。帰りの車で爆睡。

夕方から、昨日に続き絵の教室でワークショップ。三男坊はおばあちゃん&姪っ子のお世話に。

夕飯は豚キムチ、里芋の煮っころがし、いただきものの干物、味噌汁の予定。